スティル・ライフの素敵な一節

いま読んでいる池澤夏樹さん著の「スティル・ライフ」。


レビューでこの小説の書き出しが載っていて、読み始めました。
以下、「スティル・ライフ」より。




 この世界がきみのために存在すると思ってはいけない。世界は君を入れる容器ではない。


 世界ときみは、二本の木が並んで立つように、どちらも寄りかかることなく、それぞれまっすぐに立っている。


 君は自分のそばに世界という立派な木があることを知っている。それを喜んでいる。世界のほうはあまりきみのことを考えていないかもしれない。




 でも、外に立つ世界とは別に、きみの中にも、一つの世界がある。きみは自分の内部の広大な薄明の世界を想像してみることができる。きみの意識は二つの世界の境界の上にいる。


 大事なのは、山脈や、人や、染色工場や、セミ時雨などからなる外の世界と、きみの中にある広い世界との間に連絡をつけること、一歩の距離をおいて並び立つ二つの世界の呼応と調和をはかることだ。
 

 例えば、星を見るとかして。





それから「星の話だ。」と物語は始まる。
最初の一文を読んだときにドキッとした。
世界の考えを知ることができないわたしは、二十歳になっても自己中心的だ。



さすがに自分が中心に世界が回っているとは思っていないが、
自分と自分が見知っている人たち
・・・ともだち とか 知り合い 政治家 工事現場の作業員
NGOの人たち アフリカのひと アメリカの人 動物園の動物 校門の守衛さん 絶滅危惧のうみがめ
・・・とか そんな感じで このせかいができていると思っていた。



さいきん世界がつまらない
それはせかいを意識していなかったからなのかもしれない
自分の世界と、となりに立つせかい。 せかいせかいせかい・・・ あ、ゲシュタルト崩壊!!!





もうひとつ、雪のはなし。



 この岩の一部になったら、一日は一秒のように感じられ、一年が一秒のように感じられるのだろうか。


 顔の皮膚がこわばりはじめた。ほんの表面だけだけれども、体の材質が岩の材質に近づいた。座り込んで、膝をかかえたまま、雪片が次々に海に吸い込まれていくのを見ていた。


 見えないガラスの糸が空の上から海の底まで何億本も伸びていて、雪は一片ずつその糸を伝って降りて行く。からだ全体の骨と関節が硬化して、筋肉が冷えきり、内臓だけが僅かな温かさを保っているようだ。身体を動かしたいと思ったが、我慢した。岩になるためには動いてはいけない。


 音もなく限りなく降ってくる雪を見ているうちに、雪が降ってくるのではないことに気付いた。その知覚は一瞬にしてぼくの意識を捉えた。目の前で何かが輝いたように、僕ははっとした。


 雪が降るのではない。雪片に満たされた宇宙を、僕を乗せたこの宇宙の方が上へ上へと昇っているのだ。静かに、滑らかに、着実に、世界は上昇を続けていた。僕はその世界の真中に置かれた岩に座っていた。岩が昇り、それを見る僕が昇っている。雪はその上の限りない上昇の指標でしかなかった。


 どれだけの距離を昇ればどんなところに行き着くのか、雪が空気中にあふれている限り続けられるのか、軽い雪の一片ずつに世界を静かに引き上げる機能があるのか。半ば岩になった僕にはわからなかった。ただ、ゆっくりと、ひたひたと、世界は昇っていった。海は少しでも余計に昇れればそれだけ多くの雪片を溶かしこめると信じて、上へ上へ背伸びをしていた。僕はじっと動かず、ずいぶん長い間それを見ていた。




世界と、せかい。

今年は雪を見られなかった。スノーウォッチしたかったなぁ

中学の頃にミョウバンの結晶をつくったけど、また結晶作りたいなあ〜
さいきん理科って面白いかも と思っている家政学部でした(´∀`)


あしたは散歩にいこーう!